
みなさん こんにちは
2日前にカナダに戻ってきました。
日本に滞在中ハマった映画があります。それは、『国宝』です。
2025年8月21日時点で、観客動員数782万人、興業収入110.1億円を記録し、邦画実写では第2位となった話題作です。
今回は映画『国宝』について私なりの感想を述べます。そして、歌舞伎をどのようにして楽しむかを書いてゆきます。
どうか最後までおつきあいいただけたらと思います。(ネタバレ注意)
1.国宝とは

"引用:X( ツイッター) 映画『国宝』公式アカウントより@kokuhou_movie"
この映画は、吉田修一氏の小説『国宝』を原作をもとにして映画にしています。
ウィキペディアによると、この小説は『朝日新聞』に2017年1月1日から2018年5月29日まで連載されました。
のちに、加筆修正され、2018年9月7日に『国宝 上青春篇』、『国宝 下花道篇』が出版されました。
この作品は後に、第69回芸術選奨文化科学大臣賞、第14回中央公論文芸賞を受賞します。
6月に映画が公開されると、書籍、電子版合わせて累計130万部の売り上げを記録しているそうです。
作者が中村雁治郎氏の協力のもとに、実際に黒衣として舞台取材をしたそうです。
2.あらすじ
1954年長崎県の立花組の一人息子として生まれた喜久雄が父親を失い、引き取り手がいないことから、歌舞伎役者花井半二郎のもとに引き取られる。
花井半二郎の息子俊介は生まれながらに歌舞伎役者の血を引く息子。この二人が芸の道を極めるために、切磋琢磨しながら芸道を生きる物語です。
3.この映画の素晴らしいところ

この映画が素晴らしいと思った理由を3つ挙げてみました。
1)劇中劇が歌舞伎の演目
映画の主人公が女形の歌舞伎役者ということもあり、華やかな演目が登場します。
『二人藤娘』、『娘二人道成寺』は歌舞伎でも人気のある演目です。二人の息の合った舞踊は息をのみます。
『鷺娘』は人間国宝で万菊が、そして人間国宝になった喜久雄が演じています。舞台では優雅で何度も衣装が変わる「引き抜き」と言うものがあります。
引き抜きには「かぶせ」と「ぶっかえり」というものがあります。
かぶせとは、衣装の上に別の衣装を重ねて着ており、舞台上でかぶせた衣装を瞬時に抜き取ります。
ぶっかえりとは、衣装の上半身の部分を糸で留め、この糸を抜くことで衣装がめくれて腰から下に垂れる仕組みのことを言います。
この演目では、かぶせが2回ぶっかえりが1回あります。
『曽根崎心中』
喜久雄が代役としてお初役を演じ、有実ともに力をつけてゆきます。その一方で俊介は喜久雄に役を取られ、これをきっかけに歌舞伎界から姿を消してしまいます。
16年後に再びこの演目を演じることとなり、俊介がお初役を、そして喜久雄が徳兵衛を演じます。
どの作品もとても素晴らしい出来で、まるで歌舞伎座の舞台を見ているかのような気持になります。映像が美しく、華やかで、洗練されていると感じました。
美しさの中に、定められた運命を背負って必死に舞台に立っている姿、舞台から決して見ることのできない、白塗りの化粧の内側からあふれ出てくる感情までもカメラは映していました。
そして何よりも演者の吉沢亮さん、横浜流星さんのキレのある舞踊はまさに、踊りを極めただと感じました。それぐらい、くぎづけになり目が離せませんでした。
おそらく、通しで撮影されたのだと推測します。残念なことに、映像ではハイライト部分のみしか観れませんでした。時間が許すことならばすべての演目を通しで見せてほしかったです。
このあいだ、この映画でエキストラをしていた方の動画を拝聴しました。この方曰く、主演の吉沢亮さん、横浜流星さんはこの演目を通しで踊っていたそうです。
それ以外の裏話もこの方が話してくださっているので、とても興味深くそしてこの映画を鑑賞できて良かったなぁと思いました。
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2)ストーリーの面白さ
主役の喜久雄は芸道を極め、昇華させてゆく過程で、血統がないことが梨園の中で大きな障壁となります。
「おまえの血がほしい」、「血をごくごく飲みたい」と俊介に迫ってみたり、端役しかもらえず、地方を回ることになってしまったり、苦労を重ねてゆきます。
一方俊介は生まれながらに歌舞伎俳優の血を引き、その立場に甘んじて芸には甘い。喜久雄にはその欲求不満や嫉妬をぶつけてゆきます。
後に俊介は歌舞伎界に戻る決意をし、人間国宝の万菊から稽古をつけてもらい、再び歌舞伎俳優として復活します。
相対する二人に、人間国宝の万菊がお互いの主人公にグサリと付くようなセリフを言います。
短いセリフですが、お互いの主人公に深く印象を与え、さらに深みが増してゆきます。
3)映画に込められたメッセージを探す
『娘二人道成寺』、『曽根崎心中』、『鷺娘』という演目が2回ずつ劇中で演じられます。
1度目は若さと勢い、芸を磨きたいという野望、希望に満ちた輝かしい印象をもちました。
2度目に同じ演目をしたときは、16年ぶりに共演ということもあり、俊介の体に病魔が蝕まれてしまいます。それでも、自分のすべてをかけて、気迫で演じ切っています。
本人は決して「人生が終わる」ということを口には出しませんが、倒れても立ち上がろうとし、足を引きずりながら演じている俊介を見て、喜久雄がもう長くはないことを悟るのでした。
実は喜久雄はこのとき、演じながらこれが本当の今生の別れになることを悟り、今までの感情があふれ出て止まらなくなるシーンがありました。
私はとても心を打たれ涙が止まりませんでした。
映画の中に登場する「雪」。映画の始まりで喜久雄の父親は雪が降りしきる中で他の組に襲撃され命を落とします。
喜久雄にとって「雪」は悲しみの象徴です。舞台にたびたび出てくる「雪」は、喜久雄の心の変化を示す象徴として使われます。
この悲しみを癒す「雪」と変化し、そして喜久雄が芸を磨いて人間国宝となり、鷺娘を演じているときに見た「雪」は彼が見たことのない美の世界へ誘い、喜久雄が芸を磨き続けた結果、彼だけにしか見えない「美」の世界へ自分が昇華したことを表しています。
4.国宝の楽しみ方
この映画は特にどの俳優をモデルにした物語ではないようです。ですが、映画と実際の歌舞伎役者を重ねてみると、実にいろいろなタイプの歌舞伎俳優さんが活躍されています。
このような歌舞伎役者さんたちの得意な演目などを調べてみると、歌舞伎がもっと身近に楽しく感じられるかもしれません。
伝統の域を超えた新作歌舞伎も数多く演じられていますから、
ここでは、喜久雄と俊介のようなタイプの俳優さんをあげてみると実にたくさんの俳優さんが活躍されています。
そして、もっと歌舞伎が好きになるのではないのかなぁと思いました。
俊介タイプー先祖代々歌舞伎役者の血を引いた歌舞伎役者
父親を松本幸四郎さん、祖父は松本白鵬さんを持つ現在20歳の俳優さんです。七月大歌舞伎では、市川團子さんと『蝶の道行』という舞踊をされました。
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父親は人間国宝坂田藤十郎さん、母親は扇千景さんで、上方歌舞伎の重鎮です。今回の映画『国宝』では、歌舞伎指導にあたられ、映画にも出演されています。
そして、息子で女形をメインに演じている中村壱太郎さんも実は所作指導で映画に関わっていらっしゃいます。
このインタビューも、映画『国宝』の裏話を聞くことができて、ますます映画が好きになりますよ!
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喜久雄タイプー部屋子→養子→歌舞伎役者となったケース
2012年人間国宝となった、歌舞伎界のレジェンドです。もともとは、両親が営む料亭の息子で、6歳のときに歌舞伎俳優十四代目守田勘弥の部屋子となり、14歳で養子となり以降この名前で活躍されています。
私自身、初めての歌舞伎を鑑賞したのが、坂東玉三郎、片岡仁左衛門が演じる『二人椀久』でした。
坂東玉三郎さん演じる松山大夫は、寂しさをかかえた女性の役でしたが、見事にそれを舞踊でも表現されていました。
そして、動き1つ1つがとても美しく、それ以外の言葉がでてこないくらいとても衝撃を受けたのを今でも覚えております。
上方歌舞伎の名門片岡秀太郎さんの養子となり、21歳の時に現在の名前を襲名されています。
歌舞伎の枠を超えた役者として、舞台や映画に大活躍されています。私の中で驚いているのは、映画『跳んで埼玉』に出演されていたことです。
日本帰国中、妹一緒にこの映画を観て、爆笑しておりました。
梨園以外の出身で芸を極めて人気歌舞伎役者になったケース
市川笑也さんは国立劇場歌舞伎俳優養成所出身で、梨園以外の出身です。先代市川猿之助さん率いるスーパー歌舞伎『ヤマトタケル』で演技を評価され、有名になってゆきました。
昨年は『流白波燦星(ルパン三世)』にて峰不二子役を演じていらっしゃいました。七月大歌舞伎では、夜の部の鬼平犯科帳にて三次郎妻おたね役で出ていらっしゃいました。
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サウンドトラックを楽しむ
映画を盛り上げるのに欠かせないサウンドトラックですが、主題歌も素晴らしいです。
主題歌に流れている映像は、吉沢亮さん、横浜流星さんが実際に『娘日足道成寺』を踊っています。
youtu.be 引用: Sony Music Japan
まとめ
というわけで、カナダより私がはまった映画『国宝』について熱く語ってしまいました。
歌舞伎俳優さんは上記以外にも活躍されている方も多数いらっしゃいますが、主だった役者さんをざっとあげさせていただきました。
映画に『国宝』は、どの俳優さんも演技のすばらしさはもちろん、洗練された舞踊、演技に圧倒され、3時間の長時間であるのにもかかわらず、時間が経つのがあっという間でした。
人生初の映画2度見を経験しましたが、チケットの売れ行きが本当に早く、私が並んだときは、その日初回の一番最後の席を取ることができました。
実は、この映画『国宝』は私の住むバンクーバーでも話題になっていまして、来月行われるバンクーバー国際映画祭に出品されることになりました。
チケットを取ろうとしたところ、すでに売り切れとなってしまいました。
あ~あ残念、
ですが、ここで朗報です。
2026年より北米で映画が公開されることが決まりました。
youtu.be
本日も、最後まで読んでくださって、どうもありがとうございました。