みなさん いかがお過ごしですか?
かえでの国は金曜日からイースターで4連休です。
4連休はカナダに来て以来、はじめてのこと。何して過ごそうかなぁと考えているうちに、思わず早起きしてしまいました。
私は日本にいた時は老人ホームでソーシャルワーカーとして仕事していましたが、カナダに来てから保育士として働いています。おかげさまで、今年の1月で10年目となりました。
時間が経つのは本当に早いものです。
とくに昨年の10月からは3歳以下の子供の保育所(デイケア)の契約職員として仕事をしていました。
毎日子供たちと関わる中で、子供一人一人の特徴を知り、彼らの人生の始まりに「教える」という貴重な体験をすることができました。
私がどのようにして子供たちと関わっていたのかを書きたいと思います。
どうぞ最後までおつきあいいただけたらと思います。
きっかっけはムカデ
私が働いていた2歳児クラスは13人の子供たちが来ていました。半数以上の子供が
2歳半となり、ことばもスラスラと話す子供も出てきました。
このクラスに来ている男の子が体も大きくとてもわんぱくで、元気いっぱいの子供です。
気に入らないことがあると、力任せに他の子供を押したり、たたいたりしてしまうことがあり、目が離せない状態でした。
「ネガティブ」なところに注目してしまうと、子供たちは居心地の悪さを感じてしまいます。
なんとかこの状況を変えたいなぁと思い、この男の子がどのようなことに興味があるのかを観察していました。
保育所の校庭に出たときに、私は庭にある植木鉢をこの男の子と持ち上げてみました。
すると…
植木鉢の下からたくさんの昆虫がうごめいていました。
たくさんの赤ちゃんムカデ、ダンゴムシ、あり
たくさんの昆虫がいながら、彼はあまり興味を示しませんでした。
ミミズを手に乗せて見せると
そのなかに、突如大きなミミズが現れたのです。
私は思わず、てのひらに乗せて彼に見せてみました。
顔をぐっとちかづけてのぞいていると、顔をゆがませ「Scary(怖い)」と言って遠ざけていました。
私は「No worries. He is very gentle(大丈夫、ミミズはとっても優しいから)」と声をかけると、ゆっくりと私のもとに戻ってきて、「Hi !!!(こんにちは)」
と、声をかけてくれました。彼はとても思いやりのある優しい子供だということを知りました。
それ以降、この男の子とクラスの子供たちは昆虫探しが動機づけとなって外に出ることをためらわなくなりました。
そして外に出ると必ず私を呼び、植木鉢を持ち上げてミミズがいるかをチェックするようになりました。
気づいたら彼は私の名前を憶えていて、遠くにいる私を呼んできます。「Chia, where are you? (ちあ先生、どこにいるの?)」
他の子供たちも私を見ると校庭を指さして、「Chia, worms (ちあ先生、ミミズ)」と声をかけてくれます。
幸いなことに他のスタッフが昆虫チェックシートなるものを作ってくれ、このシートをもって、どのような昆虫が校庭にいるか、探すことを行ってきました。
それ以外にも、昆虫の本を読んだり、昆虫の動きをまねしたダンスをしたりして、ここひとつきほど過ごしてきました。
その結果、クモ、あり、かたつむりなどの虫を見つけることができました。気づいたときにはこの男の子以外の子供たちも昆虫の名前を覚えていました。
発達段階で言葉を話せない子供たちも、昆虫が見たいときは私を呼び、庭の植木鉢を指さして、動かすように声をかけてきます。
私はどのようなときも、彼らの要望に応じて植木鉢を移動し、一緒に昆虫たちを観察してきました。
ときには、昆虫探しと合わせ、校庭にある木や草花も合わせて話をし、昆虫は植物がないと生きていけないということ、生態系ということを教えました。
こどもたちは土に触れ、昆虫たちを目の当たりにし、生きた教材を使って学習をしたのでした。
祖父の畑で学んだ思い出
これは、私にとってやりがいのあることで、一番好きなことでした。
というのも、私が昆虫を学んだのは農家をしていた母方の祖父でした。畑仕事を通して昆虫、害虫、生態系を学んでいたのです。
昆虫が来るのは、畑で作っている野菜たちがおいしいからだ、とよく言っていました。
昆虫は時としては害になるけど、仲良くしなくては野菜はまずいくなってしまうんだ、と教えてくれました。
私は祖父が大好きでした。のちにうちの母から聞いたのですが、祖父は本当は学校の先生になりたかったそうなのです。
ですが、長男だったため家の跡取りにならなければならないため、この思いをうちの母に託したのだそうです。
私が畑で楽しく過ごすのを見て、祖父はとても喜んでいたそうです。
祖父は成人を迎えて間もなく天国に旅立ってしまいましたが、こういった経験は時間が何年たってもしっかりと覚えています。
カナダの住宅事情と子供の遊びの変化
カナダでも最近では住宅事情は一軒家は減少傾向にあります。地価の高騰で、市内に家を持つというのはほぼ不可能に近いです。
保育所のある場所も住宅街でしたが、古い家が多いために市の再開発地区に指定され、高層の集合住宅に変わりつつあります。
こういった状況ですから、子供たちもじかに土に触れることはほぼないと思われます。
ですから、子供たちにとってこのような体験はとても貴重だと思います。
『保育』の仕事のすばらしさは、どのような子供たちもそれぞれ持ったスタイルで学んでいるということ。
とくに3歳以下の子供たちは私たちから様々スキルを身に着け、成長してゆきます。今までは人生の終末に関わっていた私ですが、人生の始まりに関わることのすばらしさを
楽しむことができました。
これはお金には代えられい宝物です。
残念ながら3月末で契約は終了しますが、この間に築きあげた子供たちとのかかわりが終わってしまうのが残念でなりません。
いつかこの子供たちも思い出してくれるかな、そんなことを考えています。
今日も最後までお付き合いくださってありがとうございます。
お題「「やりがい」を感じる瞬間」